100000は大きな数で、0.0000001は小さいということに文句のあるひとはいないと思います。では、0.5キログラムのスイカは重いでしょうか。子供にとっては重いかも知れませんが、大人にとってはそれほどでもないでしょう。でも1000キログラムは1トンだから、このスイカは0.00005トンですよね。この数字は小さいですね。当たり前と言えばその通りですが、結局スイカの重さを表すとき、1キロを単位にするときと1トンを単位にするときとで、表す数字は大きかったり、小さかったりします。このような量を物理学では「次元」を持つ量といいます。スイカの重さの例ように次元を持つ量はそれ単体では、素の大小を決めることはできなくて、基準となる何かと比較することではじめて、その大小が意味をもつことになります。スイカはごま粒と比較すれば重いけれど、地球と比較すれば重くないわけですが、地球も銀河全体と比べればその重さも全く持って全然軽い(小さい)というわけです。

物理学であつかう量の多くは、何か基本的な量と比べて表現することが必要な「次元」をもちます。でも、実は例外があって137.03…(小数部分を無視して137)は次元を持たない特別な数です。名前もついていて微細構造定数の逆数と呼ばれています。単位がないので、何かと比較する必要がなく、この数には、絶対的な意味があります。なぜこの値なのかは、誰にもわからないのですが、我々の世界(宇宙)ではどこでも、いつでも同じ値をとり続けると考えられています。1970年代にボイジャー計画(だったかな)という太陽系外まで宇宙船をとばして、地球外生命との接触をめざす話があったとおもうのですが、その宇宙船に乗せたメッセージにこの微細構造定数がふくまれていて、知的生命ならその意味が理解できるはずだっていう話があったとおもうのですが、、、(確認できていません)。ということで137は我々の世界を特徴付ける数であるとされています。別な言い方をすれば、別な世界では13かも知れないし20かもしれないわけです。

話には続きがあって、光の速度が有限である効果を取り入れた量子力学によると137は我々の世界に存在できる安定な原子の種類のおよその最大値をあたえるとされます。つまり、この数字が0.1とかの世界では原子は存在し得ないし、3ぐらいだと、原子は高々2,3種類程度しかないことになって、周期律表は一行以下で終わってしまうことになるのです。そんな世界は、きっとつまらないほど単純ではないでしょうか。我々が住んでいる世界の物の豊富さ、ひいては、生物を存在するためには137が十分に大きな数字であったためと言えるわけです。おどろき!

(書くの忘れてました)更に続きもあって、2010年にノーベル物理学賞の対象になったグラフェンでは、見かけの(有効理論としての)光速が遅いことに対応して、我々の現実の世界の137は10以下と見積もられて殺風景な世界が実現されているとされています。更にオドロキ。

 

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