例えば、変圧器のなかにあるようなコイルを考えてみましょう。コイルに電流をながすとその中に電磁誘導で磁束が発生することはよく知られています。このとき発生する磁場はコイルのなかだけに存在してコイルからそとにはでないことに注意しましょう。
こんな設定で電子等、量子力学的な荷電粒子をこのコイルのそばを飛行させると磁場は全くないにも関わらずその効果をうけて例えば磁束の強さを変化させるとその大きさとともに周期的な変動が観測されるだろうというのがアハロノフとボームの予言です。磁場がないのにその効果を感じてしまうという、古典的には全く理解できない現象です。 古典的常識とはあまりにかけ離れた予言であったのでその真偽を疑うこともあったのですが、いまではこれは理論のおもちゃではなく、実際に観測されている不動の事実です。 このアハロノフ・ボーム効果はまさに量子力学的効果であり、われわれが興味を持っている幾何学的位相の重要かつおもしろい例として理解することができます。