平成24 年3 月23 日
筑波大学理工学群 物理学類 学位授与式 [photo]
物理学類長 初貝安弘
式辞
皆さん、本日はご卒業おめでとうございます。入学以来本日の卒業にいたるまでの努力が報いられたわけです、まずは心からお祝い申し上げます。入学以来、皆さんは物理学はじめ多くの学問を学んできてわけですが、現代の大学教育、特に物理学教育のレベルはほぼ20世紀の現代物理学の基礎をほ ぼ全てを四年間でほぼ教育するのですので、決して簡単なものではありません。皆さんが名前をよく知っている19 世紀以前の多くの物理学者、例えばニュートンやガリレオは知ることができなかった物理学の原理、法則などを皆さんはしっかりと理解しているはずです。その意味では皆さんはニュートンやガリレオより何歩も進んだ学問を身につけているわけです。すばらしいではないですか。皆さんは、この物理学の課程を修了したわけですので、自信をもって今後の社会生活を送っていただけるものと思います。より広い意味では、大学教育を修了した皆さんは、文系、理系を問わず学問がなんたるものかを理解できる教養人であるはずで、社会からそれ相応の敬意をもって受け止められる人材だと思います。逆に言えば、皆さんにはその社会の期待に応える責任があります。大学の卒業生は大学教育の成果そのものです。わかりやすく言えば、大学の価値とはその卒業生が作っていくものです。皆さんが頑張ればこの大学の名もあがるわけです、皆さんの今後の活躍がこの筑波大学の価値になっていくのです。この自負とそして責任をもって社会に貢献できる人間になってください。今日受け取る卒業証書は皆さんが本学の既定の課程を修了したこと、卒業生であることを社会で行使する権利を意味するのですが、逆にそれにふさわしい人材でなければならないわけで、そこには大きな責任も発生しています。昨年の大震災、そして原発事故等により社会において自然科学の意義とその重要性が再認識されたことは明らかです。より広くは現代社会の大きな課題である環境問題の解決には物理学的知識が必須であることもあきらかでしょう。大学教育を受け、そして修了した皆さんは教養人であるはずです。教養人とは自分で考え、自分で知識を得ることができる人を意味します。例えば、事故による放射線の問題も正しく科学的に認識することは物理学を学んだ皆さんの責任の一つです。不要に感情的になることなく、事実とそのリスクを自分の知識で正しく理解し判断することが必要でしょう。社会に出る皆さんは勿論のこと大学院に進学する皆さんも十分立派な社会人のはずです。新素材や新しいシステムの開発、新現象の発見、新概念の開拓、等々、皆さんの学んだ学部の物理学の知識をもとに社会を、そして物理学を、よりすばらしいものへと変えていってください。4 月からは社会にでて就職する方、本学をはじめ大学院に進学する方、いろいろだとは思いますが、何をやるにせよ、すぐに種々の問題にぶつかることと思います。その時、逃げることなく、問題を自分の知識の下で考え、不足する知識を自発的に取り入れ、みずから判断し、新しい世界を切り開いていって下さい。まずは、今日を一つの区切りとして、新しい世界でより一層活躍していただけることを心から祈っております。 以上をもって私の式辞といたします。(概略)